「ホワイトバンド」批判 ~叩かれるだろうなあと心配しつつ~

 俺は、こことは別にHPを持っている。そのバナー広告に今、「ホワイトバンド」が出る。まあ、何のことかわからない人もいるかも知れないので、一応引用しておく(http://www.hottokenai.jp/index.html)

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3秒に1人、子どもが貧困から死んでいます。食べ物がない、水が汚い、そんなことで。この状況を変えるには、お金ではなく、あなたの声が必要です。貧困をなくそう、という声を表すホワイトバンドを身につけてください。
(中略)

世界の貧困をなくすために、日本にできることは、
援助をふやす、援助をよくする、
最貧国の高すぎる返済金利を少なくする、
そして貿易をフェアにする、この4つです。

(中略)
そもそもなぜホワイトバンドを売っているのですか?

ホワイトバンドは、これを身につけて「貧困をなくそう!」とい う思いを表すシンボルです。「白いバンド」であればよいので、 いろんなものがあ り得ます。このウエブサイトでは日本版のオ フィシャルホワイトバンドの販売について紹介していますが、 「白」であれば、多種多様なバンドがあって構わないと考えてい ます。たとえば白い紐や包帯であってもいいのです。 ただし「ホワイトバンド」として売られているものの中には、営 利目的のモノであったり、フェアな貿易を無視して生産された品 があるかもしれません。購入する際には、売上の使途には注意を 払い、納得のできるものかどうか、ご確認のうえご購入くださ い。

ホワイトバンドの300円は募金ではないのですか?

ホワイトバンドの300円は、いわゆる募金運動ではありません。 「ほっとけない 世界のまずしさ」キャンペーンは、善意によってなされる寄付や募金の意義や価値を十分認めつつ、それだけでは世界の貧困はなくならないという認識から出発しています。世界の貧困には、それを生み出す世界の構造の問題があり、それを 変えることなくしては、いくら善意の寄付を積み上げても、貧困 を生み出す速度には追いつけないのです。それゆえに、「ほっとけない」と連動している世界各国のキャンペーンでは、「チャリティーではなくジャスティス(正義)を」、「あなたのお金でなく声をください」というスローガンを掲げています。貧困の詳しい構造については、こちら(特に「このキャンペーンはチャリティですか?以降)http://www.hottokenai.jp/faq/をご覧ください。

ホワイトバンドの売り上げはなにに使われるのですか?

こちらの円グラフhttp://www.hottokenai.jp/white/300yen.pdfをご覧ください。 ホワイトバンドの売上の3割は、世界の貧困をなくすための活動費に使われます。この、「世界の貧困をなくすための活動」は、現地での支援活動ではなく、途上国から先進国に富が流れてしまうような構造や、貧困からの脱却のために努力する人々やNGOの活動 を台無しにしてしまうような政治や経済の仕組みを変えるための 活動です。そのためには、ホワイトバンドをつけた人の声を集め、政治や政策をつくる人達への影響力をもっていくことが必要です。
ただし、ホワイトバンドをNGOから購入した場合は、NGOの活動支援になります。詳しくはこちらhttp://hottokenai.jp/ngonews/archives/001_campaign_news/000590.html#more
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 確かに、世界の貧困の問題は「放っておけない」。貧困+憎悪=テロだ。先進諸国も我が身が可愛ければ貧困を何とかした方がよかろう。かつての「金を送ればそれでいい」的なチャリティーからは一歩前進である。「世界の貧困をなくすために、日本にできることは、援助をふやす、援助をよくする、最貧国の高すぎる返済金利を少なくする、そして貿易をフェアにする」の4つらしい。確かにどれも良いことである。実行すれば間違いなく今よりは貧困の問題が解決に近づくだろう。
 しかし、である。「正義」という言い方に俺はカチンと来る。正義の名の下に爆撃したりとか…。まあ俺の戯言は置いておいて、少ない脳味噌を動員して考察してみた。なぜこんなに生理的に受け付けないのかと。


 そもそもなぜ貧困があるのか?
 貧困はアフリカ、アジア、中南米において顕著であるが、中南米の場合は米国政府に支援された軍事独裁政権+多国籍企業 による搾取が原因である。アジアの場合は色々原因があるが、いずれも旧植民地時代の分割統治や、大国の地政学的見地からの干渉が大きなウェイトを占める。アフリカの場合、植民地時代の分割統治+欧米の多国籍企業が原因の大部分を占めるのではないだろうか。アフリカの場合、今さら国境線の変更や民族融和など難しいので根は深いが、中南米の場合はアメリカが手を引けば問題の大部分は解決しそうだ。
 
 さて、こういった貧困の原因を考えるにつけ、ホワイトバンドは政治的なアクセスが可能であろうか?
 先日、U2を初めとしたミュージシャンが「ライブ8」なるものを行った。G8のお膝元でライブを行い、ミュージシャンの持つ動員力とミュージシャンの意見に賛同する市民の声を政治家に見せつけたうえで、途上国の債務帳消しと支援という要求を求めるというものである。
 結果として、途上国の債務の一部だか全部だか知らないが帳消しになったらしい。ロキオンの山崎洋一郎は、債務帳消しなど茶番である、どーせその金で先進国から小銃と地雷を買うから、と批判していた。むしろ、政治家の人気取りに利用されただけだ、と。俺もその通りだと思う。そして、このホワイトバンドも、利用されて終わる気がする。なぜか。
 見ると、件のサイトでは「小泉首相、『国連2005ワールドサミット』にぜひ出席してください!そして『日本は世界の貧困問題に責任を果たす』と明言してください!!」などと言っている。http://hottokenai.jp/ngo/koizumi.html
なんだか、もし小泉やブッシュがホワイトバンドしたら、それだけで問題が解決しそうな雰囲気である。
 この人たちは本当に小泉さんの政策を見ているのだろうか。今、自民党政権は国民に対して大規模な「攻撃」を加えている。
 例えば「郵政民営化」。民間の保険屋に巨額の資金が流入する仕組みを作ろうとしている。一方、保険屋の方は学者と手を組んで、遺伝子情報などから、少しでも「リスク」を持った人間からはぼったくるか最初から加入させない。弱者をさらに叩く構造というわけだ。
 例えば労働政策。「ワークシェアリング」「労働の弾力化」の名の下にリストラ&バイト奴隷労働を推奨する財界の言いなり。労働者の一人として、労働基準監督署の機能強化と、労基法違反企業への罰則強化や、内部告発者への法的保護など、色々実現して欲しいことはあるが、そっちは全くやらない。「民に出来ることは民で」らしい。かくて、労働者は社長に搾取される、と。バイトは生活が安定せず少子化は進むばかり。
 ちなみに、本来のワークシェアリングとは、残業を無くして、(場合によっては基本給も少し下げるらしい)その分浮いた余剰を新規に雇った労働者の賃金に充てる、というものだ。まさに「労働の分かち合い」。社員は、手取りは減るが仕事量も減ったので満足。失業者は新しい仕事に就けて満足。一方、企業も、ワークシェアリングをやると税制上優遇されるのでお得。これがヨーロッパのワークシェアリングだ。日本では、仕事が回るギリギリまで人員を削減し、残業させ、忙しくなると派遣やバイトを雇う。なぜこうなるかというと、残業手当が安いから。安いので、残業させた方が、新規に人を雇うより、社会保険料その他の負担がないのでお得なのだ。日本の平均残量手当は1.25倍。ヨーロッパは1.5倍。お分かり?しかもここに、「サービス残業」が入ると…
 話が逸れた。こういった「国民への攻撃」を行う小泉政権が、人を救うだろうか?大企業は救うかも知れない(笑)し、政権の延命のためにたまに良いこともする(熊本地裁のハンセン病訴訟における「控訴断念」のように。同時期の大阪高裁における水俣病関西訴訟は「即時上告」だったが)が、まあ期待するだけ無駄だろう。なぜ総選挙前という最も市民団体の政治アクセス力が強まるこの時期に、「ぜひ出席してください」なのか?むしろ、「出席し、貧困に取り組むと明言したら、投票してやる」くらいのことは言えないのか。あるいは「行かなきゃ民主党に入れる」といったネゴシエートも可能なのに、なぜしないのか。

 市民の力を結集して、新しいムーブメントを起こすというのには賛成できる。

Those of us who love peace must organize as effectively as the war hawks.
As they spread the propaganda of war,we must spread the propaganda of peace.
(Martin Luther King Jr.)

 また、「限られた資源へのアクセス」こそが政治の本質だとするならば、特に選挙前の今、市民の結集は大きなアクセス力を持つ。こういったタフなネゴシエートを可能とする市民運動が多数起これば、政治も変わらざるを得ないだろう。「土建」「財界」「農協」「医師会」といった圧力団体の列に、「貧困解決を目指す市民団体」というのが連なったらなかなか楽しそうだ。
 にもかかわらず、この運動がえらく俺にとってひ弱に見えるのは、「お願い民主主義」的な部分がある、というのもあるが、根本的には「正義」を振りかざしているからだろう。「正義」を振りかざして人間を動員していくのはむしろあっち側の十八番だ(N・チョムスキーの著作参照)。簡単に利用されるだろう。ライブ8のように。
 また、基本的に「ホワイトバンドを買って身につける」=消費という形態で、意思表示を行うという形式が生理的に嫌いである。
 加えて言うならリスクのなさ。ほぼノーリスクである。世界を変えた人間達は、もっと大きなリスクをくぐって世界を変えてきた。
先に述べたキング牧師も然り。
 それに、「公正貿易」は口で言うほど簡単ではない。とりあえずコーヒー、カカオ、バナナといったプランテーション作物はもの凄く高くなる。そういった典型的な「不公正貿易」だけでなく、多国籍企業による現地搾取まで視野に入れるなら、ユニクロ、ジャスコ、マクドナルド、スタバetcetcといった都会人お気に入りのチェーン店は軒並み「不公正」である。都会人は耐えられるのか?そういう意味で、「公正貿易」にはリスクがあろう。「不公正貿易」をしている企業をなるべく利用せず、公正貿易をなるべく利用する。それは、リスクというにはあまりにもしょぼいが。



「結局は、自分たちの『豊かな消費生活』の方が重要ですから」
(遠藤浩輝「EDEN」(講談社)より)




 とりあえず、バンドを買う金があったらアマルティア=センの著物を読んだ方が良いのではないだろうか。一万人がバンドを買うより、100人がセンの著作物を読んだ方が世界を動かすと思う。
 バンドは人を変えない。買ったことによって「俺は変わった」と勘違いする人間はいるが。
 人間の意志が現実世界に具現するとき、本や音楽、言葉、詩など、様々な形を取るが、それらは、心に入り込み、人間を変える可能性を持つ。そして、世界を変えるのは人間なのだ。
 バンドを買って誇示することによって「俺は変わった」と思う程度の人間、その程度の意志、そんなものが他人を変えうるだろうか。世界を変えうるだろうか。カルティエやグッチで身を固めて「私ってすごい」と思っているのとどこが違うのか。ホワイトバンドした人間1万人ぐらいでデモ行進したら相当すごいが、運動のベクトルとしてそれはなさそうだ。

 あるいは俺が心配している以上に単純人間が多くて、例えば全人口の95%が購入したりしたら変わるかも知れないが(まあ、それも利用されて終わるだろう)
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by g2005 | 2005-09-08 02:13 | 主張
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